─────これは、星降る街の物語・・・
「人間というものは争う生き物だ。平和とは、次の戦争までの準備期間にしか過ぎない。」
2885~2931 ドイツ第四帝国総統
アドルフ・ハルトマン
旧暦3150年。
核兵器、致死性ウイルス兵器、コバルト爆弾をはじめとした大量破壊兵器...通称〝終末兵器〟が飛び交った、〝第五次世界大戦〟。
文明は軒並み破壊され、陸地、海洋、大気、全ての環境もまた極限まで汚染され、地球は死の星と化した。
生き残った人類達は巨大宇宙船に乗り込み、新たな母星を求めて宇宙へと漕ぎ出し、長い旅の末、彼等が辿り着いたのは...、遥かな空一面をオーロラの様な膜が覆い、周囲を深い霧がかった森に囲まれた、不思議な場所だった。
それから数十年の歳月を掛けて、彼等が新天地に作り上げたのが・・・
〝N・O・A・H〟
現在、地球をルーツとする人類が暮らす、唯一にして最大の未来都市である。
そんなノアは今、新たな転換期・・・そう、佳境に立たされていた。
新歴550年。時は流れ、彼等がこの地に降り立ってから500年程の月日が経過した頃のこと。
ノア黎明期に起きたとされる未曾有の大災害、〝流星雨〟が再び街を襲い、北西区と南西区の一部が廃墟と化したノア。多くの人間が命を落としたが...それと同時に、辺りを囲む森に掛かる〝霧〟が突如として晴れたのだ。
これまでに十を超える数の調査隊が派遣されたが、その全てを阻み続けた霧の消滅は、多大な被害を受けたノアに開かれた、唯一の道標。
増えすぎたノアの人口に対して、もはやこの限られた土地は狭すぎた。
現在、ノア内のありとあらゆるシステムを管理し、街の実験を握っている大型AI、〝カーディナル〟は、実に数十年ぶりとなる外部の調査、そして開拓を開始する。
『征きましょう。───この星を、私達の新たな母星とする為に。』
全てはノアの未来の為に、私達は未知の世界へと足を踏み入れます。
きっと、そう簡単にはいかないでしょう。
ですが、私からの指示は至極簡単なものです。
妨げとなる〝障害〟は、残らず排除してください。
・・・これは、星降る街の物語。ノアの未来を、我々の運命を切り拓くのは・・・
───紛れも無い、君達だ。